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暗澹
「今だから言えることだけど、四季くん悪い大人に捕まって、騙されているんじゃないか。すごく心配したのよ」
「いかにも胡散臭いし」
黒田さんと初瀬川さんの視線が、壁に寄り掛かり、封筒に入っていたメモ紙に目を通す和真さんへと向けられた。
「でも違ってた。ね、初瀬川さん」
「四季のこと本気で好きだって、態度見れば分かる。生半可な気持ちはこれっぽっちもない」
彼が二人に見られていることに気付き、どきっとして顔を上げた。
「きよちゃんが入院している病室なんて分かりませんよね?」
「ナースステーションの前に自販機が置いてある談話室があったでしょう?その隣の部屋よ。赤字で面会謝絶のプレートが掲げられてあるからすぐに分かると思う」
「ナースステーションにいるスタッフに伝言を頼んだらいいわ。橋本さんきっと喜ぶわ」
「初瀬川さん、黒田さん、ありがとうございます」
「私こそ会いに来てくれてありがとう」
「四季くん、退院したらお茶でも一緒にどう?初瀬川さんと3人、女子会だっけ?それ、ずっとやりたかったの」
「私もですか?」
「当たり前よ。初瀬川さんがいなかったらはじまらないでしょう。橋本さんも誘わなきゃね」
黒田さんの明るい笑顔に、それまで固かった初瀬川さんの表情が柔らかくなり、自然と笑みが零れていた。
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