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暗澹
流暢な日本語に驚いていたら、
「雄士さんは産まれも育ちも日本なんだ」
彼がそっと教えてくれた。
「もういいだろう。四季を風呂に入れないといけないから。姉さん、あとは頼んだ」
車椅子を一旦バックさせて方向転換すると、そのまま真っ直ぐお風呂に向かった。
「出来れば雄士さんに会わせたくなった」
思わず出た本音にどきっとした。
「だってそうだろう。あの通り格好いいんだ。四季がもし俺じゃなく、雄士さんを好きになってしまったらどうしようかって心配だったんだ」
「僕が好きなのは和真さんだけだよ」
「なら良かった」
胸に右手をあて胸を撫で下ろした。
「四季に隠し事はしない約束だから、正直に言う。雄士さんに橋本さんの身辺調査を依頼した。さっき、岩水は君になにか言いたげだったけど……」
「え?嘘。全然気が付かなかった」
「おぃおぃ、岩水と何年一緒にいるんだ」
彼が呆れたように苦笑いを浮かべた。
「だって、和真さんが戻ってくる前にたもくんと別れなきゃ、そればかり考えていたから」
「岩水の話しはこれで終了!邪魔される前に風呂に入ろうか」
脱衣所に着くなり素早く服を脱ぎ捨てると、あれよこれよという間に服を全部脱がされ、気付いたときは抱っこされ湯船に運ばれていた。
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