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真犯人は……
「ねぇ和真さん」
雄士さんから呼び出され、朝から出掛けていた彼が帰ってきたのは夕方の6時過ぎだった。
「どうした?」
「あのね……えっと、そうだ副島さんのお父さん面白い人だね。今日会いに来てくれたんだ」
彼の眉間にどんどん皺が寄っていくのが分かった。このまま黙っている訳にもいかない。正直に言わなきゃ。自分を落ち着かせるためゆっくりと深呼吸をしてから言葉を続けた。
「気のせいかもしれないんだけど、直売所を出た辺りから誰かに見られているような気がして……周囲を見渡したんだけど誰も居なくて。急いで帰ろうとしたら車が僕の方に向かってきて怖くなって……」
背筋が寒くなるような恐怖を思い出し、がたがたと手足が震えはじめた。
「その車は二車線しかない県道を猛スピードで逆走してきたそうだ。小学生の下校時間でたまたま駐在さんがパトロールしていていたから良かった」
お爺ちゃんが温かい飲み物を運んできてくれた。
「明日から儂が四季くんに付き添う。やはり犯人は別にいた。これではっきりしたな」
「はい」
彼の表情が自然と引き締まった。
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