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報われない想い

「じゃあ四季くん、アルバイトが終わる午後3時には迎えに来るから」 「はい。お願いします」 次の日からお爺ちゃんに付き添ってもらって直売所に通うことになった。 「あれじゃあ、どう見ても不審者だ」 お爺ちゃんが困ったように苦笑いした。 駐車場してある車の影に隠れ、僕たちをしきりにちらちらと見ていたのは、 「征之(まさゆき)、そんなところに隠れてないで出てきたらどうだ?」 副島さんのお父さんだった。 「いやぁ~~照れるな」 頭を掻きながら歩み寄ってくれた。 大内そば愛好会と書かれたたすきを肩に掛け、作務衣姿だった。 「これから農協の駐車場で親子そば作り体験なんだ。始まる前に四季くんの顔を見たいなって思って。いやぁー、そんなに見られたら恥ずかしいな。ほら、汗びっしょりだ」 手をパーにして見せてくれた。 「やっぱ、可愛いな。四季くんは。癒してもらったら頑張ってくるね」 手を振りながら後ろ向きで歩き始めた。 後ろ見ないと危ないですよ。声を掛けようとした矢先、駐車スペースにある長方形の石につまずき転びそうになった。 「おぃ大丈夫か?」 「あぁ、たいしたことない。あ、そうだ。聞くのすっかり忘れていた」 副島さんのお父さんが慌てて戻ってきた。 「どうだった?どうだった?」 にこにこと笑いながら声を掛けられ、はじめ何のことか分からなくて首をかしげると、 「主語がないからほら、四季くんが困ってる」 「あ、そうだった。ごめんね。そば美味しかった?」 「はい。すごく美味しかったです。あんな美味しいお蕎麦はじめて食べたかも」 「いゃ~~嬉しいな」 副島さんのお父さんが顔を真っ赤にし照れ笑いしていた。面白いひとだ。

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