228 / 588
報われない想い
ドアが開く音がして顔を上げると、
「いらっしゃ……え?」
予想もしない人物が目の前に立っていたから驚いた。
「か、和真さん」
顔を近づけ、顔を覗き込んできた彼の瞳が凛々しいうえに色っぽくて、持っていた新玉ねぎの袋を思わず落としそうになった。
「痕……やっぱり目立つね」
左耳の下を指先で撫でられ、カァッと顔が熱くなった。
「これからは気を付けるよ」
掠れた声で囁かれ、心臓がドキドキして今にも飛び出しそうになった。
「あの……もしかして、朝宮さんの?」
パートさんに声を掛けられ、はっとして我に返った。
「妻がお世話になっています」
ニッコリと微笑み軽く会釈する彼。絵になるカッコ良さにパートさんたち、みんな見惚れてぼぉーとしていた。
「お爺ちゃんから連絡をもらって急いで迎えにきた」
「副島さんのお父さんが車で待機してくれているの」
「向こうから話し掛けてくれて。10分くらい立ち話をしていた」
彼と話しをしていたら、上がっても大丈夫だよ、今度は矢野倉さんに声を掛けられた。
ともだちにシェアしよう!