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報われない想い
チュンチュンと囀ずる雀の鳴き声で目が覚めた。
「おはよう四季」
彼の逞しい腕に包み込まれながらじっと見上げると、ふっと端整な顔の影が濃くなった。
ドキドキしながら目をぎゅっと瞑ると、唇になにか優しいものが触れる。
すぐに離れたそれが、軽く自分の唇を吸って、小さな音を立てて離れていくのが恥かしかった。
「ゆでたこみたいに真っ赤だ」
「だって……」
慌てて目を逸らすと、クスクスと笑いながらぎゅっと抱き締められた。
「そういえば副島からメールが送信されてきた。四季が預けたスマホを1週間ぶりに電源を入れてみたら、1日30回以上、全く知らない番号からの着信履歴が残っていたそうだ。あと、四季がバイトで家を留守している間、無言電話が何十件と掛かって来て気味が悪かったってお婆ちゃんが話していた」
何か衿元を冷たい手で撫でられるようにぞっとしていると、
「何があっても守る。だから大丈夫だ。心配するな」
宥めるように背中を優しくさすってくれて。おでこに、目元に、鼻先にチュッと軽くキスをしてくれて、最後に唇に口付けをしてくれた。
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