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報われない想い
カタン、ドアが開く音がして、意識が浮上していった。
目を開けると、遮光カーテンのせいもあって昼なのか夜なのか、よく分からなかった。
照明も布団の脇に置いた丸いランプの淡いものだけだった。
「和真さん……」
「おはよう。といっても夕方だけどね」
薄暗がりの中、近付いてきた彼は布団の脇に腰を下ろし、頬に手を伸ばしてきた。
「無理させてごめん。大丈夫か?」
ひやりとした手が気持ち良かった。
身体にくすぶっている熱が吸い取られていくようだ。
「まだ熱いな」
触れる手を意識して、新たな熱を生み出そうとしている浅ましい自分がいて、恥ずかしかった。
「朝から何も食べていないから、お腹が空いただろう?副島が差し入れを持ってきてくれたから一緒に食べよう」
お尻の下に手が差し入れられ、ふわりと体が宙に浮いた。
「副島の知り合いがナカトミっていう洋食屋を経営していて、そこのビーフシチューとハヤシライスが絶品らしい」
ナカトミはよくテレビのCMで流れているから名前は知ってる。老舗の洋食屋さんだ。お腹がぐぐ~~と鳴った。
「ごめんなさい」
よりによってこのタイミングでお腹が鳴るなんて。顔を真っ赤にして俯いた。
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