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狂気
帰る頃になり急速に雲が集まりはじめ雨がパラパラと降りはじめた。
「送って行こうか?」
軒下で雨宿りしていたらパートの熊倉さんが声を掛けてくれた。
「そろそろお爺ちゃんが来る頃なので大丈夫です。ありがとうございます」
「困った時はお互い様よ。近所なんだし、いつでも声を掛けていいからね」
「はい、そのときは宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げた。
駐車場に向かった熊倉さんがなぜか立ち止まり、戻ってきた。
忘れ物でもしたのかな?
「私の勘違いだったからごめんなさいね。ここ数日、帽子を被りマスクをした男が、四季くんのことをじっと見ているような気がしてならないの。四季くんに気付かれる前にいつの間にかすっといなくなってるから気付いててないと思うけど。だからね四季くん。用心に越したことはないから、気を付けるのよ。一宮さんまだみたいだから、店の中に入っていた方が安全かも」
熊倉さんにアドバイスされ、店の中に戻ろうとハンドリムをこいだ。
もうちょっとで自動ドアの前に着くというとき、誰かが猛然と後ろから走ってきた。
バシャバシャと跳ねる水音に思わず振り返った。
一瞬だけ、時間が止まって、その直後、ぐらっと視界が大きく歪んだ。
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