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狂気

気付いた時には冷たい道路に転がっていた。 全身びしょ濡れになりながら、体を起こしあちこち見回した。自分の身に何が起きたのか、頭に靄がかかったようにすぐに思い出すことが出来なかった。 「急いで駐在を呼べ」 「誰か救急車!」 次から次に人が駆け寄って来た。 「四季くん!」 「矢野…倉…さん?」 心配そうに顔を覗き込む矢野倉さんと目が合うなり、涙がぼろぼろと零れた。 駆け付けてくれた農協の給油所の男性スタッフが、僕を抱き上げてくれた。 「ふたりの男がきみにわざと体当たりしたんだ。一回転はしたんじゃないかな?それで車椅子が自動ドアにぶつかって……」 一部始終を見ていたという男性スタッフに言われ、ちらっと自動ドアを見ると、ガラスがクモの巣状にひび割れていた。 「この近くで交通事故があって、一宮さんから、渋滞に巻き込まれてなかなか車が前に進まないって連絡があったわ。もう少しで到着すると思うから」 「はい」 僕に体当たりした男たちは別々の方向に走って逃げたみたいだった。一人の男性は帽子を深く被りマスクをしていた。熊倉さんが見た男と同一人物だったかも知れない。

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