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狂気
でもたもくんの達の方が一枚上手だった。拳銃に手を伸ばそうとしたお巡りさんの背後に、坊主頭の大柄の男が気配もなくすっと現れると、こめかみに先の尖った鋭利な刃物を突き付けた。
あっ、あの人……。
顔に見覚えがあったけど、なかなか思い出すことが出来ないでいたら、
「施設で一緒に育った先輩の顔くらい覚えておけよ」
たもくんに苦笑いされた。
そうだ、思い出した。彼は3才年上の先輩で、16歳の時傷害事件を起して施設を出たんだっけ。
「彼は悪くない。園長ときよに嵌められた」
「どういうこと?」
たもくんは悔しさを滲ませ上唇を噛み締めた。
「お巡りさんよ、早う後ろに両手を出せや」
男の指示になかなか従おうとしないお巡りさんに業を煮やしたのか、
「あんたのカミさん、あんたより年下なんだろう?なかなか別嬪だな」
「お前、美波に何をした?」
くくくと薄笑いを浮かべ、男がお巡りさんの耳元で何かを囁くと、
「分かった。言う通りにする」
手錠を男に渡し後ろに両手を出した。
「それでいい」
男はお巡りさんの手首に手錠を嵌めると、足で背中を蹴飛ばした。
「たもくん、なんでこんなひどいことを」
「みんな大人たちが悪い」
たもくん達と外に出ると、福祉タクシーが横付けされてあった。
たもくんに抱っこされたまま後部座席に乗り込むと、そのまま急発進した。
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