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一生消えないこころの傷
運転手席に乗り込むと、たもくんが帽子とマスクを外した。
「どうしたのその顔」
元の顔が分からないくらいにぼこぼこに腫れ上がっていた。さっきは気付かなかったけど、腕もあちこち青あざだらけだった。
「きよに別れを告げて、病院を出たらきよの取り巻きに拉致られて、監禁されて暴行を受けた。先輩や西本さんたちが助けてくれた」
「嘘……」
にわかには信じがたい言葉に愕然とし、手で口を押えた。
「ごめんな四季。きよの取り巻きに連れ戻される前に、最後に行きたいところがあるんだ。黒田さんと武田課長には謝罪の手紙を送った。朝宮さんにも伝わるはずだ。明日の朝までには家に送り届ける。だから付き合ってくれ。ごめん。本当にごめんな」
たもくんは謝ってばかりいた。
「たもくんが犯人…なの?」
「違う。俺じゃない」
短く答えるとハンドルを握り、アクセルを静かに踏み込んだ。
それから30分近く、たもくんは一切喋らなかった。信号機が赤になり停車すると、ポツリポツリと何があったのが話しはじめた。
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