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一生消えない心の傷
「俺もきよの本性に気付かなかった。気付いときには沼から抜け出せなくなっていた」
一瞬だけ胸の辺りを気にする素振りを見せたたもくんに大丈夫?って聞いたら、
「優しくするな。誤解するだろ?」
困ったように苦笑いされ、メモリーカードとラジオみたいなものを渡された。
「これは?」
「高橋先生、覚えてるよな?」
「うん、事務の先生だよね?2年前に行方不明になったんだよね?」
「あぁ、彼が西本さんの甥だ。行方不明になったあと川で遺体が見付かった。顔に殴られた痕や手足に縛られた痕があったにも関わらず警察は自殺と断定した。西本さんは何度も警察に足を運び捜査をしてくれと頼んだが門前払いだ。西本さんは高橋さんが自殺に見せかけて殺されたんじゃないか。そう思い甥の死の真相を調べるために、シルバー派遣の清掃員として施設に潜り込んだらしい。ラジオみたいなのはボイスレコーダーだ。俺もこれを聞いて愕然した。きよの本性にやっと気付いた。メモリーカードはデータを復元出来るか分からないけど、四季に託す。喉、乾かないか?飲み物何が買ってくる。待ってろ」
たもくんが車から下り、施錠して建物の前に並んだ自動販売機まで走っていった。
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