262 / 588

一生消えない心の傷

右手でハンドルを握り、左手で胸を押さえるたもくん。苦し気に眉を寄せると、額からは汗が噴き出していた。 「たもくん、具合が悪いなら次のインターチェンジで下りよう。病院に行こう」 「たいしたことはない」 「だってさっきも痛いのを我慢してたよね?」 「肋骨にヒビが入ってるだけだ。骨折している訳じゃないから大丈夫だ」 「どこが大丈夫なの?全然大丈夫じゃないよ」 「次に捕まったら、間違いなく殺される。だから、どうせ死ぬなら最後に大好きな人とデートして、海を見ながら好きな子の腕の中で死にたい」 「たもくん駄目だよ。死ぬなんてそんなのダメ。警察を呼ぼう。助けてもらおう」 「警察は嫌いだ。信用できない」 「そんなこと言ってる場合じゃないよ」 白いワンボックスカーが車間距離をじりじりと詰めながら、バッシングしてきた。 「たもくんスマホ貸して」 こうなったら一刻の猶予もない。 腕を伸ばしダッシュボードの上に置いてあったスマホを手に取った。 「暗証番号教えて」 「連中からは逃げられないよ」 「斎藤さんがいる」 「斎藤さん?」 「弁護士さん。弱いものの味方だよ。吉村さんもいる。ふたりともたもくんを絶対に守ってくれる。だから僕を信じて」 「 ……分かったよ」 根気負けしたのかたもくんが暗証番号を教えてくれた。

ともだちにシェアしよう!