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一生消えない心の傷
和真さんに電話を掛けたけど運転中なのか、なかなか電話に出てくれなかった。白いワンボックスカーはけたたましくクラクションを鳴らしながら、追い越し車線にウィンカーも出さず強引に割り込むと、今度は幅寄せをしてきた。
命の危機が差し迫る緊迫した状況に関わらずたもくんは不思議と落ち着いていた。
バックミラーをちらっと見て後続車がいないことを確認するとペダルから足をすっと離しわざと減速させた。
「もしもし、四季です」
和真さんにようやく電話が繋がった。
『四季?怪我はないか?無事か?』
「うん。僕は大丈夫」
『良かった』
「あのね和真さん、白いワンボックスカーに追われてて」
「それは盗難車だ。駐在所のお巡りさんが路駐していた車の運転手に声を掛けたら猛スピードで走り去った。スマートインターがこの先にあるから、そこで下りるよう岩水に伝えてくれ。こんなこともあるかと思い料金所の先で副島と吉村を待機させておいて良かった』
「ありがとう和真さん」
『副島には何があっても岩水を殴るなって言ってはあるが、もし万一飛び掛かったら、そのときはごめんな』
「うん、分かった。あとね、たもくん肋骨にヒビが入ってるの。詳しい説明はあとでするから、すぐに病院に連れていかないとならないの」
『分かったよ。心配するな』
力強く励まされ何度も頷きながら電話を切った。
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