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複雑に絡み合う想い
副島さんからそこから動かない方がいいと言われた彼。時刻はすでに夜の9時過ぎ。ダメもとで車椅子でも泊まれるホテルをネットで探したら、駅前のシティーホテルがヒットした。
ラブホテルなんか連れていった絶対にドン引きされるよな。うん。止めよう。彼がお姫様抱っこしながら、なにやらぶつぶつと一人言を口にしていた。
チェックインの時、フロントの方が車椅子を準備してくれていた。
「お風呂は部屋にもあるけど狭いらしい。最上階に大浴場があるみたいだ。事情を説明したら10時半から30分だけだけど貸切にしてもらえた。一緒に入れるから良かった」
「うん」
彼に車椅子を押してもらいエベレーターに乗り込むと、部屋のある5階のボタンを押してくれた。
部屋に入るなりお姫様抱っこしてもらい、ふかふかの大きなベットにそっと静かに下ろしてもらった。
「四季が無事で良かった。またこうして抱っこが出来る。嬉しいよ」
「心配ばかりかけてごめんなさい」
「何があってもきみを守るって約束しただろう?気にしてないよ。お茶飲む?」
「うん」
ここに来る途中で立ち寄ったコンビニエンスストアで購入したペットボトルを渡された。
「副島のお父さん、朝から駐車場で張り込んでいたんだって。気付いてた?」
「え?」
彼に思いがけないことを言われどきっとした。
「矢野倉さんが四季を見ている不審な男がいる。お客様が気味がっているという相談をお爺ちゃんと副島のお父さんにしたらしい。それで交代で張り込むことにしたらいよ」
彼がペットボトルの水を飲みながら隣に腰をおろしてきた。
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