｢全く同じ格好をしているけど、不審な男はふたりいる。元刑事と元新聞記事記者の目は誤魔化せない。ひとりは悪意のある眼差しで四季を見ていた。憎悪、嫉妬、殺したいほど憎い。でももう一人は、心配で心配でいてもたってもいられない、そんな感じでそわそわしていたそうだ。岩水はきみを傷付けたりはしない。だから後者の男は岩水じゃないか、お爺ちゃん達はすぐに気付いたそうだ。俺たちに何かを伝えるためにわざと事件を起こそうとしているんじゃないかって。雄士さんが橋本さんの転院先を突き止め、張り込んでいたら岩水以外の男たちが頻繁に出入りしていることが判明した｣ 彼が膝の上にごろんと横になると、甘えるようにすりすりと顔をお腹に擦り寄せてきた。 ｢和真さん、くすぐったい。それに汗臭いかも知れないから｣ ｢唯一許せないのは、岩水が、四季がこんなにもワンピース姿が似合っているってことを知っていたことだ。俺、全然聞いてないよ｣ これでもかと頬っぺたを膨らませ睨まれた。 だから早く着替えをしたかったのに。斎藤さんが服を買ってきてくれたけど、彼がこのままでいいって言うから。 女の子の格好をするの、本当は恥ずかしいんだよ。足はすーすーしてなんか落ち着かないし。 ｢和真さんの意地悪｣ 負けじとむっとして睨み返すと、愉しげに笑いながら片手を髪に伸ばしてきて。指先で弄びながら、顔を起こすとチュッと頬っぺたにキスをしてくれた。