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複雑に絡み合う想い
大きな道路を渡った先にスーパーとドラックストアが並んでいる。いつものように地下歩道のエレベーターの前で待っていたら、黄色いカバーをランドセルに付けた一年生の子どもたちが保護者に付き添われて歩いてきた。
「くるまいすのひとがさきだよね」
ひとりの男の子が母親に声を掛けた。
くるまいすのひとって僕しかいないよね。
キョロキョロと辺りを見回すと、自転車に2人乗りした高校生が背後からすっと現れて、扉が開くなり自転車から下りることなくそのままエレベーターに乗り込んでしまった。危ないでしょう!貼り紙見えないの?注意する保護者たちの声は恐らく届いていない。
「あの制服S高校だよね?」
「交通ルール守らない子がほんとに多いのよ。赤信号でも平気で突っ込んでくるし、一時停止のところも止まらない。4人、5人で横に並んで自転車をこいでいるから危なくて見ていられないのよ」
「かなり荒れてるって噂じゃない」
保護者の方が眉を寄せヒソヒソと話しをはじめた。園長先生の話しに及ぶ前にエレベーターに乗らなきゃ。そう思ったものの、こういうときに限ってなかなか扉が開かなかった。
キョロキョロと辺りを見回し、二度、三度と確認していたら、
「おにいちゃん、じてんしゃこないよ」
「だいじょうぶだよ」
男の子たちにまた声を掛けられた。
「おしてあげる」
「ぼくもおしたい」
「ありがとう」
ふたりの男の子がよいしょよいしょと掛け声をあげながら車椅子を押してくれた。
「おんなじだね」
ランドセルにぶら下げた防犯ブザーを見せてくれた。
「ほんとだ。同じだね」
スーパーの近くに住んでいるという子どもたちと一緒に地下道を進み、地上に出ると、あちらこちらからサイレンの音が聞こえてきた。
「物騒な世の中になったわよね」
学校からメールが来てるかも知れない。保護者のお母さんたちが心配そうにスマホを覗き込んだ。
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