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複雑に絡み合う想い
「サイレンの音があちこちから聞こえるから、四季くんが心配で」
お爺ちゃんが何事もなくて良かった、胸を撫で下ろしていた。
「副島さん、買い物袋儂が持つよ」
「いえ大丈夫です。車まで運びますので」
「そうかい。助かるよ。ありがとう」
「こんなのお安いご用です。和真の前では絶対出来ないアレをする絶好の機会なので。今日を逃したら次は結婚式当日になるので」
「アレ?」
お爺ちゃんが不思議そうに首を傾げた。
「そう、アレです」
副島さんが不適な笑みを浮かべた。
「もしかして笑ってる?儂の目がおかしいのか?」
「黒幕が誰か分かったのでもう偽る必要はなくなりました。全力全身、兄として四季を守ろうかと」
「そうか、和真といい副島さんといい、鬼に金棒だ。あ、そうだ!牛乳頼まれていたんだ。すっかり忘れるところだった。先に行っててくれ」
お爺ちゃんが副島さんに鍵を預け、慌ててお店に戻っていった。
「一宮さんも車椅子マークの交付を受けたんだ」
「うん、雨の時なるべく濡れないようにって」
「そうか。ありがたいな」
副島さんが先に後部座席を開けて買い物袋を中に入れると、次に助手席のドアを開けてくれた。
シートに手を置いて乗り移ろうとしたら、お尻の下に手が差し入れられ、ふわりと体が宙に浮いたから驚いた。
もしかして副島さんがしたかったことって……。
「やっと念願が叶った」
副島さんを見上げると嬉しそうににこっと微笑んでいた。
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