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複雑に絡み合う想い

「ねぇ和真、お爺ちゃんから聞いた?四季くんお手柄だったんだよ」 「え?何のこと?」 ポトフに入れた人参と睨めっこしていた彼が驚いたように顔を上げた。 「人参まだ苦手なんだ」 「だって土の味がするから……そんなことよりお手柄だったってさっき」 「お爺ちゃんにね男も整形するのって聞いたみたい。誰も思い付かなかい突拍子もないことだけど、それを聞いた城さんの顔色が変わったみたい」 「どういうことだ。話しが見えないんだが」 「スーパーの駐車場で園長先生の奥さん、まなみ先生っていうだけど、男性といるところを見掛けたんだ。その一緒にいた男性、顔は少し変わっていたけど初瀬川さんのお兄さんかも知れない」 「ということは園長先生の奥さんも事件に関わってるということか?」 彼が混乱するのも無理がない。 僕だって頭の中を整理するのに半日かかったもの。 「黒幕はきよちゃんじゃなくて、まなみ先生かも知れない。だって夫婦だし一緒に暮らしてるし仕事も一緒なんだもの。園長先生ときよちゃんの関係に気付かない訳ないもの。園長先生が国や県から交付された補助金をひそかにプールし、きよちゃんや女の子たちと遊んでいたこと。それに気付いた高橋先生の口を塞いだこと。何もかも知っていた。まなみ先生は初瀬川さんのお兄さんを仲間に引き込み、きよちゃんを監視するため送り込んだ」 「顔も名前も変えれば、誰も初瀬川さんの兄、義之《よしゆき》だとは気付かないからな。もしかしたら四季のことも監視していたのかもな。そうか、なるほどな」 彼がフォークに刺した人参をパクッと何の躊躇もなく口に運んだ。 「和真さん、それ人参……だよ」 「あ~~そうだった。すっかり忘れていた。なんで人参食べちゃったんだよ俺」 慌てて、わたわたする和真さん。なんかこどもぽくて可愛いかも。

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