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信じていた人の裏側に隠された、もうひとつの顔
副島さんが険しい表情でバックミラーを睨み付けた。
「後続車がハイビームでパッシングしたり、車間距離をわざと詰めたりしている。四季、結、ふたりとも車酔いしていないか?」
「僕は大丈夫。結お姉さん体の具合は大丈夫?気持ち悪くない?背中擦った方がいい?」
結お姉さんの顔を覗き込むと、
「心配してくれるんだ」
「だって結お姉さんは、僕の大切なお姉ちゃんだもの。結お姉さんに何かあったら、心配で何も手に付かなくなるもの」
「聞いた副島。和真が今までこんなことを私に言ってくれたことある?ないよね。いやぁ~~もう、四季くん大好き」
薄暗くて表情までは見えなかったけど、結お姉さんが嬉しそうににこにこと笑ってぎゅっとハグしてくれた。
「櫂に焼きもちを妬かれても知らないぞ」
「心配しなくても、櫂くんは私の妹には焼きもちを妬かないわよ」
「ベタベタしていると暑苦しいって四季に嫌がられるぞ」
「四季くんはそんなこと言いません。だよね?」
急に話しをふられ慌てて頷いた。
「僕も、結お姉さんが好き。櫂さんも好き。あ、そうだ。もちろん、副島さんも好きです」
一番大好きなのは彼だけど……。
「副島のこと、昔みたくお兄ちゃんって呼んであげたら」
「結、余計なことを教えなくていい」
「え~~なんで、なんで。四季くんにお姉さんって呼ばれるお前が羨ましいって言ったのどこの誰かな?」
「誰だろうな」
ごぼんとわざとらしく咳払いする副島さん。
「煽られて事故を起こしたら大変だ。この先にあるファミリーレストランに入ろう。人目に付いたところにいた方が安全かも知れない。ふたりともちゃんと掴まってろ」
副島さんがアクセルを強く踏み込んだ。
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