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信じていたひとの裏側に隠されていた、もうひとの顔

「四季くん、副島がおごってくれるって。食べたいもの好きなだけ頼んでいいって」 「そんなこと一言も言ってないぞ」 副島さんも結お姉さんが相手だとどうも調子が狂うみたい。 「でもまぁ、今日もお姫様抱っこさせてもらえたし。いいぞ」 「夕ご飯食べたばかりだから」 「デザートは別腹だろう」 クスクスと笑われてしまった。 平日でも店内は多くのお客さんで賑わっていた。ドリンクバーと店員さんイチオシのお抹茶のミニパフェとチョコバナナサンデーをそれぞれ注文した。 「いいよ、俺が運ぶから、ふたりは座ってろ」 飲み物を取りに行こうとしたら副島さんが椅子からすっと立ち上がった。 「副島くらいのルックスなら、世の女性がほっとく訳ないのに、浮いた話しひとつもないんだよ。絶対恋人がいると思うんだけどな。あっ、そうだ。和真がね、結婚しましたって人事部に報告したとき、女子社員みんな何かのジョークだと思ったみたいよ。まさに寝耳に水だったみたいで茫然自失となってたみたい」 「女子社員の皆さんにごめんなさいって謝らないと恨まれるね」 「うん、女子は怖いから……あ、ごめんね。そういうつもりじゃなかったんだけど」 「ううん大丈夫」 にこっと笑って首を横に振った。

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