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信じていた人の裏側に隠された、もうひとつの顔
「封筒にどんな細工が仕込まれているか分からないからな。それに重要な証拠品だ」
彼が隣にゆっくりと腰をおろした。
透明のクリアファイルに挟んだ手紙を渡された。
「カッターの刃や、怪しげな粉末とか、そういう類いのものは入ってなかった。はなから疑ったりして申し訳ないことをした」
「まなみ先生はみんなのお母さんだから、よほどのことがない限り怒ったりしたいもの」
ふっーとひとつ深呼吸してから手紙に目を落とした。丸っこい独特の字。まなみ先生からの手紙で間違いない。
【いつも下ばかり見て、人の目ばかり気にして、おどおどしていたあなたが、まさか結婚するとは。招待状をもらい、悪い大人に騙されているんじゃないか。あなたが心配で様子を見に行きました。
あなたの笑った顔を2年振りに見ました。
優しそうなご主人に、孫の嫁ではなく、孫娘と呼ぶ一宮さん。実の妹のように可愛がってくれる義姉さん。
素敵なご主人と、家族に巡り会えて良かったね。
先生は橋本さんと決着を付けなきゃならないの。あの娘がサイコパスで殺人鬼になってしまったのは私たち大人が悪いんだもの。
岩水と自分が実の兄妹と円谷から聞いたとき、あの娘笑っていた。ムカつくあの女の大事な甥と四季。ふたりいっぺんに地獄に叩き落とすいいチャンスだって。だから先生、命に代えてもあなたを守る決意をしたの】
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