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信じていたひとの裏側に隠されていた、もうひとの顔

「まなみ先生を止めなきゃ」 「駄目だ」 温かな腕に引き寄せられ、抱き締められた。 「これ以上は関わらないほうがいい」 「なんで?まなみ先生はきよちゃんを殺そうとしているんだよ」 縋り付くように彼の服にしがみつくと、 「これはふたりの問題だ。他人が口を挟む事じゃない。あとは城さんを信じて任せよう」 宥めるように髪を優しく撫でてくれた。 「四季、俺はずっと――きみと一緒にいたいんだ。離したくない。愛している。だからこそ、きみを失いたくないんだ。四季なら分かってくれるよね?」 きつく抱き締められ、返事の代わりにおずおずと抱き返すと、するりと頬を掬いあげられた。 「和真さん、待っ……」 ここ家にじゃないよ。そう言おうとした唇にしっとりとした口付けをされた。 「んっ……」 首筋に軽く歯を立てられ、僅かに身を震わせると、そのまま布団に静かに寝かせられた。 「お休みのキスくらいさせて欲しいな」 ニコッと笑うと、再び口付けをされた。 長く、短く。 深く浅く繰り返されるキス。 合間には、愛情を伝える言葉を惜しみなく囁かれ、拙いながらも懸命に受け止めると、ご褒美と言わんばかりに鼻先まで口付けをされた。

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