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コオお兄ちゃん
「和真、いつまでそうやってきめっ子しているつもりだ。四季くんには妹を溺愛してやまないシスコンの姉と兄がいる、そのことを分かった上で四季くんと結婚したんだろう。諦めて副島と一緒に寝るんだな」
櫂さんが彼を宥め、結お姉さんの隣に横になった。
「みんなで一緒に川の字で寝るなんてそうそうないからね。結の言った通り修学旅行みたいでいいね」
「でしょう。ねぇねぇ四季くん。四季くんは修学旅行どこに行ったの?ちなみに私と櫂くんは京都と大阪のテーマパークで和真は北海道。副島は私立の高校だったからハワイだったんだよ」
「ええと」「その……」ためらいの言葉を口にしながら、視線が宙をさまよった。
悩んだ末、みんなに嘘を付きたくなかったから正直に答えた。
「実は僕、修学旅行には行ってないんです。二年前のあの事件のあと、ひとが怖くて部屋から出れなくて、学校にも行けなくて。修学旅行はその年の10月にあったんですけど、本当は行きたかったけど、結局行けなかったんです」
結お姉さんがはっとしたように目を見開いた。
「ごめんね、私ったら……」
「大丈夫です。もう昔のことだから」
後ろから伸びてきた温かくて大きな手が頭を撫でてくれた。
「昔のことじゃないだろう」
「楽しい思い出まで奪われて悔しかったはずだ」
彼と副島さんに優しい言葉をかけられて、涙腺が一気に崩壊した。
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