323 / 588
コオお兄ちゃん
征之おじちゃんが椅子から立ち上がると、冷蔵庫の脇に立て掛けてあった刺股を手に取った。
「不審者といつなんどき鉢合わせになるか分からないからね、息子や和真くんがいないとき、四季くんを守れるのは僕しかいないからね。一宮に手解きを受けたから大丈夫。それに下駄箱に痴漢撃退用スプレーも準備してあるから」
「俺も行く」
コオお兄ちゃんも椅子から立ち上がった。
「外を見てくる。和真、櫂、もし何かあればすぐに110番しろ」
そう言い残すと慌ただしく玄関に向かった。
「心配しなくても大丈夫だ」
そわそわしていたら、大きな手が髪を優しく撫でてくれた。
「あれ、このひと……」
結お姉さんが驚いたような声を上げた。
「ねぇ櫂さん、この女性、この前カフェに来てくれた人じゃない?」
テレビの画面を指差した。
「確かにそうだね」
気になってハンドリムをこいでテレビの前に移動した。
「一週間くらい前にカフェに来た一見さん。結が常連客と、和真くんと四季くんの話しで盛り上がっていたとき、涙を流しながら聞いていたんだ。四季くんの知り合いですか?って聞いたら、お金をテーブルに置いてすぐに帰ってしまったんだ」
テレビに映っていたのは、まなみ先生だった。
ともだちにシェアしよう!