『フィッシング詐欺事件の首謀者は現役の警察官だった』 あっ、この声は……。 間違いない。コオお兄ちゃんのスマホから聞こえてくるのは吉村さんの声だ。 『佐瀬が将来を見込み可愛がっていた男だ。佐瀬はある若者にその罪をすべて着せ、事件を終わらせた。中学校のときにイジメにあい、不登校になり引きこもっていた若者だ。その若者の最期の言葉を聞いた遺族が警察に息子は本当に犯人なのかと詰め寄ったが、門前払いだ。俺は上司に捜査のやり直しを何度も掛け合ったが相手にもされなかった。やがて真相を突き止めた俺に、佐瀬はやってもいない機密情報流出の全責任を擦り付け、警察から追い出したんだ』 ｢吉村になんで刑事を辞めて弁護士になったんだと聞いたことがある。俺やあの若者みたく何も悪いことをしていないのに濡れ衣を着せられたひとはもっといるはずだ。その人の大切な夢や希望、家族を守るために俺は弁護士になるって」 コオお兄ちゃんがちらっと僕に視線を向けた。