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命にかえても守りたいもの

からん、からん、ドアベルが鳴り、紺色のスーツに身を包んだ、白髪まじりの男性が息を切らしながらカフェに入ってきた。 ちらっと男性の顔を見た武田課長が、わずかに険しい表情で唇をぎゅっと結んだ。 男性は僕たちがいるテーブルの前でぴたりと立ち止まると、 「久し振りだな朝宮。斎藤と吉村から結婚したって聞いたぞ。相手は?もしかしてきみか?」 キョロキョロと辺りを見回し、初瀬川さんを指差した。 「私じゃありません。朝宮さんの隣にいる、車椅子の子が奥さんの四季くんです」 初瀬川さんが慌てて首を横に振りながら、僕を指差した。 「え?」 驚くのも無理がない。 呆然としてしばらくの間立ち尽くしていた。 「男の子で悪いんですか?ねぇ、初瀬川さん」 「黒田さんの言う通りです」 見かねた黒田さんが苦言を呈すると、 「気を悪くさせてしまいすみません。はじめまして、阿部法律事務所の代表の阿部と申します」 彼が斎藤と吉村の上司だ。関西に出張していたから、なかなか紹介することが出来なかった。ごめんな。小さい声で話してくれた。

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