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命をかけても守りたいもの
ぴたりと寄り添ってくれていた彼が、大丈夫か?と何度も声を掛けてくれて。背中を優しく擦ってくれた。
佐瀬さんは高橋さんが見付かった川の下流付近で見付かった。
ネットに本人が書いたと思われる謝罪文が公開されるや否や、K警察署と県警に県内外から抗議の声が殺到し、急遽県警のトップか会見を開くことになったみたいで、スマホからその会見の模様が流れていた。
記者から質問責めにあい、額の汗を拭いながらたじたじになる男性。言葉に詰まると隣にいる警察官に何度も助けを求めていた。
「阿部さん、そろそろ行きましょう」
武田課長が椅子からすっと立ち上がった。
「櫂さん、ご馳走さまでした」
厨房に立ちカウンター席に座る常連さんらと談笑していた櫂さんに深々と頭を下げた。
「朝宮さん、四季を宜しくお願いします。四季、朝宮さんと仲良くな。うんと可愛がってもらうんだぞ」
僕や初瀬川さんをこれ以上不安にさせないように武田課長なりに気遣ってくれたんだと思う。ニコニコと笑顔を絶さなかった。
「武田課長」
もう二度と会えないような気がして。
ハンドリムをこいで必死であとを追い掛けた。
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