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命をかけても守りたいもの

お爺ちゃん大丈夫かな? 眠ったまま、このまま目を開けないってことないよね? 考えたくないことばかりが頭を駆け巡り、背が寒くなる。 寒さを感じ自らを抱き締めると、ふんわりとした温もりが触れた。 彼がスーツの上着を肩にかけてくれたのだ。 「大丈夫だ」 彼がしっかりとした口調でそう言うと、ぎゅっと手を握ってくれた。 うん、頷いて握り返すと、体温が混じりあい、胸のなかも少し温かくなったような気がした。 「四季くん」 お婆ちゃんに声を掛けられ、慌てて手を離した。 「お爺ちゃんのこと見ててもらってもいいかしら。和真と斎藤さんとナースステーションに行ってこようと思ったんだけど」 「はい、分かりました。僕でお役に立てることなら喜んで」 「ありがとう」 彼とお婆ちゃんと斎藤さんが連れ立って病室をあとにした。 気のせいかも知れないけど、お爺ちゃんの瞼がぴくっと微かに動いた。 「お爺ちゃん」 何度か声を掛けたら、瞼がゆっくりと開いた。 「あれ?四季くん?」 「このままお爺ちゃんが目を覚まさないんじゃないかって心配で。お爺ちゃんまでいなくなったらどうしようって気が気じゃなかったんだ。だから、お爺ちゃんが目を覚ましてくれて本当に良かった」 ほっとしたら涙がぽろぽろと溢れてきた。 「心配掛けてすまない。四季くんは優しいね」 「そんな優しくないです」 首を振りながら手の甲でごしごしと涙を拭った。 「そんなことないよ。四季くんは優しいよ。それに可愛いから世の男がほっとくわけない」 「全然可愛くないです」 顔を振るとお爺ちゃんが困ったように苦笑いを浮かべた。

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