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命をかけても守りたいもの

「お爺ちゃん?」 「いや、何でもない」 もしかして照れてる?気のせいかな、顔がほんのり赤いような。 「和真に目立つところに付けるなって言っておかないとな。なんで四季くんじゃなくて、儂が恥ずかしがってんだ」 その言葉にドキッとし、慌てて項に手をあてた。顔から火が出るくらい恥ずかしくて、身の置き場に困ってしまった。 足音が病室の前まで止まった。 和真さんかなと思い振り返ったものの、いつまで待ってもドアは開かず。 でも誰かに見られているような、人の気配を感じ、息を詰めドアをちらちらと見ていたら、 「四季くん?」 お爺ちゃんに声を掛けられ、どきっとした。 「気のせいかも知れないんですけど、誰かに見られているような気がして」 「なんだ四季くんもか」 お爺ちゃんが腕を伸ばしてきて、ハンドリムに手をそっと置いた。 「そのままベットを回って。反対側に来るんだ」 「それでもしお爺ちゃんに万一のことがあったら?」 「曾孫の顔を見るまではそう簡単には死なないよ。それに和真もすぐに戻ってくるから大丈夫だ」 ハンドリムをこいで、ベットの反対側に回ると大きな窓からは町が一望出来た。昨夜の雨が嘘のように雲ひとつない青空がどこまでも広がっていた。 「四季くん、実はな」 お爺ちゃんが天井を見上げ、意を決したように静かに口を開いた。 「1週間くらい前から、毎日のように無言電話が掛かってくるようになったんだ。昨日の夕方、空が真っ暗になるくらい大量のカラスが家の回りをカーカーじゃなくて、ギャーギャーと狂ったように鳴きながらぐるぐると飛んでいたんだ。四季くんに何かあったんじゃないか、心配になってそれで出掛けたんだ」

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