368 / 588

命をかけても守りたいもの

「だから四季くんが無事で良かった。お爺ちゃんも四季くんが心配で生きた心地がしなかったんだ」 お爺ちゃんが良かった。安堵のため息をつき、そっと涙ぐんだ。 「そういえば岩水くんは?大丈夫なのか?」 「和真さんに焼きもちを妬かれるから、彼の前では言えなかったけど、たもくんね、自分のことはいつも後回しで、小さい子たちの面倒を率先してみてたんだ。だから、みんなたもくんが大好きだった。僕も頼れる格好いいお兄ちゃんのたもくん大好きだった。だから、武田さん夫婦のところで今度こそ幸せになってもらいたい。たもくんが傷付いて、苦しむ姿をもう見たくない」 「あぁ、そうだな」 お爺ちゃんが大きく頷いた。 「たもくんときよちゃん、誰もが羨むお似合いの夫婦になれると思っていたから、まさかこんなことになるなんて……」 悔しくて手をグーに握り締め、声を震わせ唇を噛み締めると、 「お爺ちゃんもお婆ちゃんもふたりが実の兄妹だとを知って絶句した。亡くなった人を悪くは言いたくないが、人の面を被った鬼とはまさに彼のことを言うんだろうな」 そのときお爺ちゃんが何かに気付き、表情を強張らせた。

ともだちにシェアしよう!