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命をかけても守りたいもの
「何しに来た」
すっーとドアが開いて、お爺ちゃんが声を荒げた。
「見舞いに来て悪いのか?」
入ってきたのは城さんだった。手には真っ白な花束を抱えていた。
「生花は持ち込み禁止だぞ」
「俺じゃない。ドアのところに立て掛けてあったんだ」
「城、誰かと擦れ違わなかったか?」
「いや。あ、でも階段を駆け下りる音は聞こえた」
城さんが花束をまじまじと見つめた。
「念の為鑑識に回しておくか」
そういいながら丸い椅子に腰を下ろした。
「何しに来た。用がないならさっさと帰れ」
お爺ちゃんが手でしっしっと払った。
「そう邪険にするな。遺体の身元が割れたから、わざわざこうして来てやったのに」
まなみ先生じゃありませんように。神様にもすがる想いで祈った。
「もったいぶってないでさっさと言わんか」
「鑑定の結果、遺体はマネキンだった。デパートから盗難届が出ているマネキンだと判明した」
「本当に、まなみ先生じゃないんですよね?」
しつこいくらい何度も聞き返したら、城さんに苦笑いされてしまった。
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