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命をかけても守りたいもの
こそこそ隠すより真実をありのままに伝えよう。彼と話し合い、病院の駐車場でたもくんに電話を掛けた。
『朝宮さんに言われるまですっかり忘れていたけど、確かに2年前、原因不明の目眩がするとかで1週間くらい入院していた。きよがまさか妊娠していたなんて、全然気付かなかった』
驚くたもくんに彼が言葉を選び、きよちゃんが妊娠していることを伝えた。
『やっぱりそうだったんだ』
「やっぱり?」
『お節介やきの丸和電機のパートのおばちゃんたちから、間違いない、ちゃんと本人に聞きなさいよってしつこくせっつかれていたんだ。きよに聞きてものらりくらり上手い具合に話しをそらされて。朝宮さん、まなみ先生は?きよは?』
「県警が総力を上げて探しているが手掛かりすら見付からない」
『ついさっき警察から見付かったのは遺体じゃなくマネキンだったと連絡がありました。まなみ先生、生きてるってことですよね?』
「そう信じて待ってよう」
たもくんと話しを終えた彼はハンドルを握った。
「和真さん、どこに行くの?」
「市内の産婦人科。2年前、橋本さんが入院していた病院だ。院長とはちょっとした知り合いなんだ。教えてはもらえないと思うけど何事も聞いてみないと分からないだろう?」
彼が真っすぐ前を向いた。
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