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後悔

幹線道路沿い。コンビニエンスストアの向かい側にベージュ色の2階建てのながはらレディースクリニックが建っていた。 夫婦で産婦人科医。院長の永原先生は物腰が柔らかで誰にでも優しく仕事熱心。奥さんの南先生は、竹を割ったような性格で細かいことは気にしない。思ったことはズバズバと言うから、大抵のひとは逃げ腰になる。先生が苦手な男性は多い。でも、それもすべて妊婦さんと赤ちゃんの為。大切な命を育てるだから、父親になる男性にあえて厳しく接している。そんなことを彼が話してくれた。 彼に車椅子を押してもらい緊張しながら病院の中に入ると、 「和真くん~~お久しぶり~~」 白衣姿の女性が彼に抱き付いてきた。結お姉さんと同い年くらいかな? 「南、和真くんが戸惑ってる。それに奥さんの前だよ」 ノンフレームのメガネを掛けた男性が奥から姿を見せた。 「ん?いま、奥さんって言った?」 すっと彼から離れるとじぃーと見られた。 「もしかしてきみ、両性?」 「あ、は、はい」 「実はね、市内に子だくさんママの両性の子がいるの。私、長男以外の子どもたち全員取り上げたのよ。この子も旦那さんとかなり年が離れてて、きみは幾つ?まだ二十《はたち》前だよね?」 「はい。18歳です」 「18歳?」 南先生が彼をじろりと睨み付け、耳をむんずと掴むとそのまま診察室へ引っ張っていってしまった。 「痛い!南先生!真面目に痛いんだってば」 彼の悲痛な悲鳴が上がり慌てて追い掛けた。

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