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後悔
「和真さん大丈夫?」
両手を伸ばし、彼の腕を掴むとよいしょっと引っ張った。
「ありがとう四季」
「急いで冷やさないと。ハンカチしかないけど、ちょっと待ってて」
ハンドリムをこいでトイレに駆け込み、ハンカチを水で濡らし、すぐに彼のところに戻ると、南先生が彼の傍らに立っていた。
「あっ……」
目が合いハンカチを握ったまま立ち止まると、
「結が言ってた通り可愛い子ね」
にっこりと優しい笑顔で話し掛けられた。
「四季くんだっけ?」
「はい。そうです」
「和真くんのこと宜しくね」
「あ、は、はい」緊張し過ぎて変な声が出てしまった。
5分と掛からず駆け付けた警察と鉢合わせにならないよう、すぐに2階に移動した。エレベーターがないから、彼に抱っこしてもらい、南先生に車椅子を運んでもらった。
「わぁ~~可愛い」
彼に抱っこされたまま廊下からガラス越しに見えたのは産まれたばかりの赤ちゃんが三人並ぶ新生児室だった。小さいお手手をぎゅっと握り締め、すやすやとねんねしていた。
「本当に可愛いね。赤ちゃん欲しくなった?」
「えっと、その……」
熱っぽい目で見つめられ、ぽっと頬が赤くなった。
「……和真さんは?」
恥ずかしくて目を逸らし聞き返すと、
「授かり物だし、まだいいかなって思っていたけど、四季が欲しいなら、俺も欲しい」
そっと顔をあげると、にこっと微笑み掛けられた。
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