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まなみ先生には幸せになって欲しかった

あれ、このガソリンスタンドもドラッグストアもさっきも通ったような。同じところをぐるぐると走っているような気がして、 「和真さん、あの……」 思わず声を掛けた。 「迷子になってるのは阿部先生の方だよ。動かないで大人しく待っててくれれば探す手間が省けるんだけどね」 困ったように苦笑いを浮かべた。 目を凝らすように窓の外を見つめた。 すると信号機の手前にあるコンビニエンスストアの駐車場で笑顔で手を振る男性が目に入った。 「和真さん、阿部さんいたよ」 指を指した。 「ありがとう四季。良かった見付かって」 右にウィンカーを出し駐車場に入ると静かに停車させた。 「昔、この辺りに住んでいたから土地に明るいかなと思ったんだが、自信過剰だったようだ。いゃ~~すまなかった」 阿部さんが頭を掻いた。 「あの車は?」 「近くに用事があって、部下に乗せてきてもらったんだ。駐車場に入るまでの道路が狭くてな、一度車を擦って、妻に大目玉を食らったことがあるんだ」 「それなら帰り事務所まで送ります」 「なんだか悪いね」 「いいえお気にならずに」 阿部さんが後部座席に乗り込んできた。 「新婚さんのお邪魔をして申し訳ない」 阿部さんの方が恥ずかしがって照れていた。

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