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悲しい再会
「恐らく倉庫とか暗くてじめじめしたところに長い間、放置されていたんだろう。カビだらけだ。はなから仏さんを供養する気はなかったんだろう。バチ当たりもいいところだ」
阿部さんが怒りを露にした。捜査員が中身を確認するために蓋を開けると除湿剤と脱臭剤が山のように詰め込まれてあって、小さな骨壺が2つ、大きな骨壺が一つ出てきた。
「至急、鑑識を呼べ」
捜査員が声を張り上げた。
「円谷には悪い噂が絶えなかった。実際行方不明になったひともいる。事件に巻き込まれたのは明らかだった。それなのに捜査する必要はない。家出でさっさと片付けろって、あのとき、ちゃんと捜査していれば……」
50代くらいの捜査員が怒りに震えながら悔しそうに唇を噛み締めた。
「それってもしかして……」
阿部さんが何かを思い出したみたいだった。
「間違いない。岩水奏心 さんのだ」
強い確信を持って阿部さんが言葉を発した。
「でも奏心さんは10年以上前にすでに亡くなっているはずです」
「それは事実じゃない」
阿部さんが語気を強めた。
「ある日突然、行方不明になったんだよ。母一人、子一人、生活費を切り詰め貯金を崩しながら貧しい生活を送っていた。認知を拒む相手に養育費を請求する為にはどうしたらいいか、無料の法律相談を受けに来たのが縁で奏心さんと出会った。行方不明になる10ヶ月前のことだ」
じろりと捜査員を睨み付けた。
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