404 / 588
たもくんの決意
久保木さんは恐らくきよちゃんを守りたい一心で自首したんだと思う。K警察署に移送後、取り調べには素直に応じているものの、きよちゃんのことや居場所について聞かれると貝のように固く口を閉ざし一切喋ろうとはしなかった。
未成年被疑者の場合は公開捜査が出来ない。再犯の恐れがあったとしても、実名や顔写真を一般に公開し捜査をすることが出来ない。きよちゃんとお腹の赤ちゃんがどうか無事でありますように。祈ることしか僕には出来なかった。
それから数日後。まなみ先生の葬儀が火葬式(直葬)としてしめやかに執り行われた。ごく親しい身内だけで、お金をかけず静かに見送ってほしいというまなみ先生の遺言を尊重し、葬儀やお通夜をしない火葬式を選択した。
直前の連絡にも関わらず火葬場には卒園生が大勢集まった。火葬炉のスケジュールの関係で火葬炉の前ではゆっくり話すことが出来なかったけど、火葬の間、待合室やロビーでまなみ先生を静かに偲ぶ一方で、凶行に走らせた園長先生への恨み辛み、きよちゃんへの恨み節が次から次に噴出した。
「みんなでカンパしてお墓を作ろう。このままだったら、まなみ先生も、たものお母さんや妹さんが浮かばれない」
先輩の一人が意を決し声を上げた。
「墓作るのにいくらかかると思ってんだよ」
「そうだった」
そんな中、救いの手を差しのべてくれたのは武田さん夫婦だった。
「もし良かったらだけど、その件は私たちに任せてくれないかな」
思わぬ申し出にたもくんは驚き、涙ぐみながらも宜しくお願いしますと、頭を深々と下げた。
ともだちにシェアしよう!