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はじめての家族旅行

「誰?」 「さぁ、知らない。こはる、出発するか」 女の子を抱き上げると、車に向かって歩き出した。 がたがたと震えて怯える結お姉さんを一切見ようともしなかった。 だから、腹が立った。 「四季、待て!」 彼やコオお兄ちゃんには止められたけど、ハンドリムをこいで男性のあとを追い掛けた。 「被害者には時効なんてない。法であなたを裁けなくてもいつかきっと天罰が下る。娘さんが大人になって、結お姉さんと同じような目に遭って、それではじめて気付くと思う。結お姉さんがこの10年どれだけ自分を責めて続け、血を吐くくらい苦しんできたか、妹をモノにしか思わないあなたには一生分からないでしょうね」 男性は女の子を後部座席のチャイルドシートに乗せると、何事もなかったように運転手席へと乗り込んでいった。 若い女性がちらちらと僕を何度か見てから助手席へと乗り込んでいった。 「四季」彼が後を追い掛けてきた。 「ごめんなさい。やっぱり人違いだったかも知れない。こんなところに和真さんのお兄さんがいる訳ないもの。休憩したし出発しよう」 彼に心配を掛けまいと明るく振る舞った。 「四季くんありがとう」 車に乗せてもらうと先に乗っていた結お姉さんにぎゅっーと抱き締められた。

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