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はじめての家族旅行
「なんか無心になれるね」
「こんな風に絵を描くなんて中学校以来かも
知れない」
「だよね」
結お姉さんと目が合うなり、笑みが零れた。
「四季くんは……桜?」
「あ、はい。なんか難しくて上手く塗れなくて。結お姉さんは?」
「自分ではオレンジの菊の花を描いたつもりなんだけど、結構難しいね。櫂くんは?」
結お姉さんが手元を覗き込むと、
「出来てからのお楽しみ」
慌てて手で隠した。
「えぇ、何それ」
他のお客さんがチラチラとこっちを見てぷぷっと笑っていた。
「相変わらず賑やかな夫婦だな」
コオお兄ちゃんがやれやれとため息をついていた。
体験時間は40分。あっという間に時間が過ぎていった。
「和真、どれだけ四季の写真を撮っているんだよ」
「お前こそ、俺より撮っている癖に」
「だってさぁ、四季の一挙一動可愛くて、一瞬だって見逃したくないんだ。しょうがないだろう」
彼に呆れられながらも、満足そうにスマホの画面を覗き込むコオお兄ちゃん。
妹との大切な思い出が増えた。嬉しそうににっこりと微笑んだ。
お婆ちゃんと黒田さんと初瀬川さんのお土産の絵ろうそくを購入し、お店をあとにした。
「この通り七日町通りっていうんだって。レトロな感じが素敵だね」
「はい」
「カフェがあったらお茶したいよね?」
情緒あふれる街並みを眺めながら、結お姉さんとのんびりと散策した。
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