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はじめての家族旅行
それから数分後、駐車場の前に到着した。でも、中には入らずしばらく路肩に停車したのち、なぜか駐車場を素通りし、別の駐車場に車を停めた。
「パトカーが2台停まっていたんだ。四季に見せたくなかったから、ごめんね。驚いたよね?」
「ううん、大丈夫です」
彼と櫂さんの手を借り車から下ろしてもらうと、背後に視線を感じそっと後ろを振り返った。斎藤さんの弟さんが胸の前で腕を組み、僕をじっと睨み付けていた。
「妻が怖がっている。頼むから睨まないで欲しい」
見かねた彼が声を掛けると、それが面白くなかったのか、眉間に皺を寄せた。
「昴」
コオお兄ちゃんが運転手席から下りてきた。
「別行動にしよう。天守閣の前で集合ってことでいいかな?和真くん、行くよ」
「はい、櫂さん」
「この通りの名前は椿坂っていうんだって。春になると満開の桜が咲くみたいだよ。観光案内の掲示板にほら書いてある」
櫂さんと結お姉さんの後ろを、彼と一緒についていった。緩やかな上り坂になっていて、頑張ってハンドリムをこいだけど、結お姉さんたちとだいぶ離れてしまい、途中からは彼に車椅子を押してもらった。
「わぁ~~大きい」
赤瓦の屋根の立派な天守に思わず歓声を上げた。
城内は広い公園になっていて車椅子でも気兼ねなく散策出来るようトイレも含め整備されてあった。
入城料金を四人分払い、天守閣入口の前で、コオお兄ちゃんと斎藤さんの弟さん、昴さんを待った。でも、どんなに待ってもふたりはなかなか現れなかった。彼が電話を掛けようとしたら、
「悪い、遅くなって」
コオお兄ちゃんたちがやっと追い付いた。昴さんは相変わらずご機嫌斜めだった。
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