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初めての家族旅行
「この際だ。副島と昴をふたりきりにしてくっつけたらどうだ?ダブルルームがちょうど空いてるぞ」
さっき手を振っていた男性は彼でも櫂さんでもなく、僕に手を振っていた。
「正美だよ。岡正美。覚えてない?」
「そんなこと急に言われても……」
「それもそうだよな。きみは8歳くらいだったから覚えていないのも無理ないか。きみと同じしらさぎ丘養護施設の卒業生なんだ。仕事がどうしても休めなくて、まなみ先生の葬儀に参列することが出来なかった。副島とはバイト先で知り合って、それ以降仲良くしてもらったんだ」
彼がコオお兄ちゃんが言ってた友だちで、このホテルのスタッフだった。
「それ、いいかも。私、賛成。櫂くんも和真もだよね?」
「当人同士の問題だからね」
「無理矢理くっけてもなぁ、余計に拗れないか?」
結お姉さんはコオお兄ちゃんと昴さんをくっつける気満々だった。彼と櫂さんは戸惑いながらも、ふたりが幸せになれば、結と四季いちいちに焼きもちを妬くこともないか、そんなことを話していた。
部屋に戻る途中、窓から夜空を見上げると、星の光は鮮やかで、地上には赤い火が、潤んだように瞬いていた。
「お腹いっぱい食べれた?」
「はい。和真さんは?」
「しいて言うならメインディッシュが物足りなかったかな」
「 メインディッシュ?」
「きみだよ、四季」
熱を帯びた眼差しで見つめられ、
「もう、和真さんのエッチーー」
恥ずかしさのせいで、うまく舌が回らない。
「キス、してもいい?」
「え?ここで?」
「誰も来ないよ」
前屈みになると、長い指に頤を掬われた。
視線が絡むと、のぼせたように顔が真っ赤になった。
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