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はじめての家族旅行
ふわっと一瞬だけ身体が宙に浮いたような気がした。
気付けば床の上に寝転がっていた。
「四季、大丈夫か?」
彼がそっと抱き上げてくれた。
「昴!」
コオお兄ちゃんが声を張り上げた。
「副島、怒ってもしょうがないよ。昴、使って悪いが横倒しになっている車椅子を起こしてくれないか?四季にとって身体の一部。大事なものなんだ。頼むよ」
「何で僕が?そんなに大事なものなら自分で起こせばいいでしょう」
苛立ちを露にする昴さん。
その直後。
つかつかと櫂さんが近寄っていって、ぱちんと昴さんの頬を打った。
「四季くんは、きみと副島の恋が実るよう誰よりも願ってるよ。それも知らないで四季くんを妬むなんて。言語道断だよ」
櫂さんが昴さんを叱り付けた。
「和真くん、副島悪いけど昴くんを部屋に連れていって。ここでは他の宿泊客の迷惑になるから。四季くん、大丈夫?結が首を長くして待ってるから、部屋に行ってあげて」
渋々ながらも昴さんが車椅子を起こしてくれた。
「あらあら大丈夫?」
「躓いて転倒するなんて、ドジですよね」
「きみって子は……昴くんに酷いことを言われたのに、それでも庇おうとするなんてね……」
結お姉さんに心配を掛けないようにするつもりが、逆に心配を掛けてしまった。
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