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初めての家族旅行

彼が二ツ折りの革製の免許証入れから写真を取り出し見せてくれた。 「副島に阿部さん、櫂さん、斎藤兄弟、吉村、副島の父親、お爺ちゃんとお婆ちゃん。同じ写真をみんな肌身離さず持ち歩いている」 「どっかの誰かさんと悪徳顧問弁護士が、金にものを言わせ裏であれこれと手を回して、犯行時、精神衰弱より正常な善悪の判断が出来なかったとして、彼とコイツら全員無罪放免にしようとしたんだ。この金髪の男は当時の県警の幹部のバカ息子だ。スキンヘッドの男の父親は産科医で全国的にも有名な不妊治療の専門医だった」 「この人たちが和真さんのお兄さんの共犯者なんですよね?」 「あぁ、そうだよ。阿部さんはあの通り曲がったことが大嫌いな熱血漢だから、動かぬ証拠を警察に突き付け、重い腰をあげさせたんだ。でも、時は遅し。警察が別件で逮捕状をとりアジトに踏み込んだとき、すでにあの人は仲間とともに逃げたあとだった」 「金髪の男とスキンヘッドの男はその後関東一円を縄張りにしているある暴力団に入り、組長や幹部のボディーガードをしているらしい。残りの二人は、女性を騙してクスリを飲ませ、同じような事件を何回も起こし、5年前にようやく……やっと逮捕出来た」 「犯行の模様を録画して裏ビデオとして売買していたんだ。それだけじゃない。医師免許もないのにスキンヘッドの男は父親の病院に駆け込み出産で来た妊婦の腹を裂いて胎児を取り出し、父親の病院を廃業に追い込んだ。コイツら全員人の面を被った鬼だ」 彼とコオお兄ちゃんが写真に写る男性四人を睨み付けた。

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