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はじめての家族旅行

ふと外に目をやると、数十匹の燕が乱舞していた。 青空を切り取るナイフの形の黒い翼で急旋回し、身を翻していた。 「燕って夫婦で協力して子育てをするんだって。天敵の蛇やカラスから子どもたちを守るため、わざわざひとの出入りの多いところに巣を作るみたいだよ」 彼とコオお兄ちゃんと櫂さんは初めてのろくろ体験に苦戦していた。 陶芸体験がしたいと急に言い出したのは結お姉さんだ。 「言い出しっぺが現場監督だなんて聞いてないぞ」 「たまにはお爺ちゃんとお婆ちゃん孝行してもバチは当たらないと思うよ」 結お姉さんが機嫌よく笑っていた。 ここに来る前になんでも願いが叶うと巷で噂になっている伊佐須美神社に参拝した。駐車場に車を停め下ろしてもらうと、今がちょうど見頃の何万株というあやめが僕たちを出迎えてくれた。結お姉さんは参拝そっちのけで櫂さんと池の鯉にエサやりを楽しんでいた。 「四季は何をお願いしたの?」 「あーちゃんが無事に産まれますようにって。和真さんは?」 「四季と無事に結婚式を迎えられるようにってお願いした」 にこっと笑むと 「体は大丈夫かな?」 じっと顔を覗き込まれた。 「か、和真さん‼」 耳まで真っ赤になりながら、恥ずかしくて下を向いた。

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