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はじめての家族旅行

「和真さん、お爺ちゃんなんて?」 「(あのひと)の妻を名乗る女性からお爺ちゃんに助けを求める電話があったみたいだ。たちの悪い悪戯だと思い相手にせずすぐに電話を切ったみたいだけど、今ごろになって本当に助けを求めていたのかも知れないって。副島、征之さんなんて?」 「うーん」「ええと」といった、ためらいの言葉を使い、顔をしかめるコオお兄ちゃん。混乱しているようだった。 「もしかして、(あの人)に懸賞金を掛けネットで探していた人が誰か分かったのか?」 彼の問い掛けに、口を開くも言葉が出てこないみたいだった。 「美登里さんの亡霊かもね。この世には自分と瓜二つな人間が三人はいるって聞いたことない?」 「いや、ないけど」 彼が首を横に振った。 「アカウント名、副島まこ。アイコンに使われていた写真は間違いなく俺の母のだ。父さんと阿部さんが確認した」 コオお兄ちゃんの声が震えていた。 「副島まこのアカウントはすでに削除されていたが、スマホの画面を画像としてスクリーンショットしたものがこれだ」 コオお兄ちゃんが吉村さんから送信されてきたものを見せてくれた。笑顔が素敵な女性がひまわりの花束を両手で抱えていた。 「母は余命幾ばくもないと医師から宣告されたあと延命治療を断り、命尽きる寸前までバス事故の真相究明と、被害者救済のために奔走していた。体がどんなにしんどくても決して弱音を吐かず、いつも笑顔で、誰にでも優しいひとだった」

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