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はじめての家族旅行
「バス事故の被害者の誰かが、まこさんの名前を名乗った、そう考えられないか?」
「何の為に?」
怪訝そうにコオお兄ちゃんが彼に聞き返した。
「ーー復讐……じゃないかな?」
結お姉さんがぼそっと呟いた。
「被害を受けた女性のほとんどが告訴を断念した。あの人の父親が慰謝料を払ってそれで全部チャラ。理不尽だよね。実際に動画が拡散されてありもしないことを誹謗中傷されて自殺した女性もいる。今も苦しんでいるひとが大勢いるのよ」
結お姉さんが雲ひとつない空を見つめた。
恨まれて当然。いつかきっと天罰が下るわ。結お姉さんが心の中にずっとしまいこんでいた本音を漏らした。
会津美里町をお昼に出発し、蔵の街・喜多方に到着したのは午後2時過ぎだった。事故による渋滞に巻き込まれすっかり遅くなってしまった。
「結が行きたがっていたラーメン屋、駐車場はあるんだが狭いんだ。だから、知り合いの家に駐車させてもらう。そこから歩いても五分と掛からないから」
「あれれ、もしかして昴くんに恋のライバル登場」
「あのな結……彼とはそういう関係じゃないよ」
コオお兄ちゃんが返答に困っていた。
「なかなか来ないなら心配したぞ」
真新しい一戸建ての門扉の前で長身の男性が僕たちを笑顔で出迎えてくれた。
「きみが噂の副島の妹?」
自宅前で車椅子を下ろしてもらうと男性に早速声を掛けられた。
「四季はシャイで人見知りなんだ」
助手席からコオお兄ちゃんが、後部座席から結お姉さんと櫂さんが下りてきた。
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