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真実
「へぇ~~そうなんだ」
「和真、バックしても大丈夫だ」
「ありがとう」
副島さんと櫂さんに誘導してもらい、なんとかレージに駐車することができた。
「車椅子でラーメンを食べれる店は数が少ない。狭い店内、入口に段差がある店、席のほとんどが小間上がりの店、ランチタイムには、人気店には行列が出来る。これから向かうところも出入口が狭いから妹さん、ご主人に抱っこしてもらったらいいと思うよ」
小檜山 と名乗った男性が道案内をしてくれたから、迷うことなくラーメン屋さんに辿り着くことが出来た。
店舗は個人宅の一階に構えてあった。ラーメン位地 と書かれたのれんも、老麺会と書かれたのぼりも紺色で、準備中の看板が掲げてあった。小檜山さんは別に気にすることなく、こんちはーと声を掛けながら引き戸をがらりと開けた。
「さっきも言ったけど狭いから足元に気を付けて」
小檜山さんに案内され結お姉さんたちが先にお店に入り、僕は彼に抱っこしてもらい最後にお店に入った。ラーメンスープの油がまじった香ばしいにおいにお腹がぐぐ~~と鳴ってしまった。
「おじさん、おばさん、ふたりが会いたがっていた長澤さん……結婚して今は朝宮さんか、彼を連れてきたよ」
厨房で準備に追われていた白髪交じりの男性と、小柄な女性の手が止まった。
「儂は夢でも見てるのか?」
「おじいさん、夢じゃありませんよ。初めまして星といいます。私たちの息子夫婦が磐越道のバス事故で亡くなっていて、生きているうちにあなたに会いたいと思っていたのよ。結婚したって聞いたけど」
「はい。彼が夫の……」
椅子に下ろしてもらい、彼を見上げた。
「朝宮和真です。宜しくお願いします」
一緒に頭を下げた。
カウンターには在りし日の息子さん夫婦と一緒に撮影した家族写真と、もうひとつ飾ってあった。それを見た瞬間あっ!思わず声を上げた。
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