450 / 588

真実

「へぇ~~そうなんだ」 「和真、バックしても大丈夫だ」 「ありがとう」 副島さんと櫂さんに誘導してもらい、なんとかレージに駐車することができた。 「車椅子でラーメンを食べれる店は数が少ない。狭い店内、入口に段差がある店、席のほとんどが小間上がりの店、ランチタイムには、人気店には行列が出来る。これから向かうところも出入口が狭いから妹さん、ご主人に抱っこしてもらったらいいと思うよ」 小檜山(こびやま)と名乗った男性が道案内をしてくれたから、迷うことなくラーメン屋さんに辿り着くことが出来た。 店舗は個人宅の一階に構えてあった。ラーメン位地(いち)と書かれたのれんも、老麺会と書かれたのぼりも紺色で、準備中の看板が掲げてあった。小檜山さんは別に気にすることなく、こんちはーと声を掛けながら引き戸をがらりと開けた。 「さっきも言ったけど狭いから足元に気を付けて」 小檜山さんに案内され結お姉さんたちが先にお店に入り、僕は彼に抱っこしてもらい最後にお店に入った。ラーメンスープの油がまじった香ばしいにおいにお腹がぐぐ~~と鳴ってしまった。 「おじさん、おばさん、ふたりが会いたがっていた長澤さん……結婚して今は朝宮さんか、彼を連れてきたよ」 厨房で準備に追われていた白髪交じりの男性と、小柄な女性の手が止まった。 「儂は夢でも見てるのか?」 「おじいさん、夢じゃありませんよ。初めまして星といいます。私たちの息子夫婦が磐越道のバス事故で亡くなっていて、生きているうちにあなたに会いたいと思っていたのよ。結婚したって聞いたけど」 「はい。彼が夫の……」 椅子に下ろしてもらい、彼を見上げた。 「朝宮和真です。宜しくお願いします」 一緒に頭を下げた。 カウンターには在りし日の息子さん夫婦と一緒に撮影した家族写真と、もうひとつ飾ってあった。それを見た瞬間あっ!思わず声を上げた。

ともだちにシェアしよう!