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恩返し
「泣きすきだ」
彼が困ったようにハンカチで涙を拭ってくれた。
「そんなこと言われても……」
「黒田さんはきみにどうしても恩返しがしたかったんだと思う。だから、旧姓の黒田を名乗り、きみの側で、きみを見守っていた」
「朝宮さんの言う通りだよ。四季さんの証言があったからこそ上遠野さんはご主人の汚名を返上する出来たのよ。感謝しても仕切れない。そう言ってたもの。これ、サービス。うちの餃子は手作りだから旨いよ。若いんだからうんと食べな」
「星さんありがとうございます」
お皿にどーんと盛られた餃子が目の前に置かれ、目を丸くした。
結お姉さんはK市内にある菱沼組という、指定暴力団に匿われることになった。先代組長とお爺ちゃんが旧知の仲みたいで、二つ返事で引き受けてくれたみたいで、結お姉さんはすぐに引っ越した。命の危機がすぐそこまで迫っている。結お姉さんとあーちゃんを守るため、櫂さんは苦渋の決断を下した。
腕っぷしがたつ、見た目があまり怖くない若い構成員が交代で、カフェを手伝いながら櫂さんの護衛をすることになった。
はじめての家族旅行から帰ってきて数日後。ようやく黒田さんと会うことが出来た。
「てっきり新婚旅行に行ったと思ってたの。良かったわね修学旅行に行けて」
「はい。これ、お土産です」
紙袋をテーブルの上に置いた。
「餞別も渡していないのに。貰えないわ」
「そんな、たいしたものじゃないので、受け取ってください」
「そう。じゃあ、遠慮なくもらうわね」
黒田さんが紙袋のなかをちらっと覗いた。
「もしかしてこれ会津絵ろうそく?わぁ~~嬉しい。ありがとう四季くん、朝宮さん」
ニコニコと笑顔を浮かべていた黒田さん。
彼の表情を見てなにかを察したのか、急に黙り込んだ。
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