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恩返し

「副島さんから、息子がラーメン伊地に行ったみたいだ。そう連絡があって、四季くんに本当のことを話す時が遂に来たんだ、そう思ったわ」 黒田さんが紙袋を隣の椅子に置いた。 「黒田は旧姓なの。主人の運転ミスがバス事故を招いた。加害者の家族として、世間から冷たい目で見られ、言われなき誹謗中傷を受けて会津若松に住んでいられなくて、息子とあちこち転々としたの。四季くんが証言してくれたお陰でバス事故は主人の運転ミスが原因ではないことが証明されたの。まこさんは主人の無実を信じ亡くなる寸前まで私たち親子をずっと支えてくれたの」 黒田さんの目から涙が一筋零れ落ちた。 「きっと主人が引き合わせてくれたのね。だから私は全身全力で四季くんを守ろうと決意したの」 「黒田さんは、橋本が黒幕だと気付いていたんですか?」 彼が静かに口を開いた。 「確証はなかったけど、そうじゃないかなって思っていた。だから、武田課長に協力を頼んだのよ。結局、彼を巻き込んでしまったけどね」 黒田さんが温かい抹茶ラテが入ったマグカップをゆっくり口に運んだ。

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